クラウドコンピューティングは時期尚早
最近「SOA」に代わって「クラウドコンピューティング」が人気バズワードのようだ。
IT系のサイトや雑誌にもよく特集が組まれている。
見ていると、
・ITを資産から費用に変えられる
・初期投資が安価
・すぐに使い始められる
というあたりが主な訴求ポイントとなっている。
一見よさそうに見えるし、たしかにそれらの点はメリットだと思う。
しかし、致命的なデメリットがクラウドには存在する。
データがサービス提供者に囲い込まれてしまうことだ。
これまでも、「.NETで作ったらWindows以外のOSを選択できなくなる」といった
囲い込みが存在した。
それが、今度は「データを丸ごとベンダーに囲い込まれる」という事態になる。
もちろん、良心的でまともなベンダーならば、ユーザがデータを
エクスポート/インポートしたり、バックアップする手段を用意するだろう。
(無いとしたら、そんなサービスは検討にも値しない!)
しかし、それでも対応としては不十分だ。
なぜなら、データだけ存在しても、それをうまく扱うソフトウェアがなければ
意味がないからだ。
ここで、ベンダーが倒産や合併によってソフトウェアのサポートを打ち切った
場合を想定しよう。
これまでのように自社の資産としてソフトウェアを購入していた場合、
たとえサポートが打ち切られてもだましだましそのソフトを使い続けることもできる。
しかし、クラウドで利用していただけの場合、打ち切られた瞬間から
そのソフトは使用できなくなってしまう。
バックアップやエクスポートしたデータがあったとしても、それを扱う
適切なソフトが無ければ、そのソフトを使う業務は再開できない。
都合よくまったく同じ仕様のソフトを他のベンダーも提供していればよいが、
企業向けソフトウェアの性質を考えれば、それはまずない。
ほぼ同じ業務でも、それをソフト化する際の解は無数にあり、
それが画面やデータの項目に反映されているからだ。
データ項目の定義が違えば、移行は簡単には実現できない。
(今でも、移行プロジェクトだけで○人月〜、という世界でしょ?)
すなわち、クラウドコンピューティングを企業内のシステムで利用することは時期尚早なのだ。
利用するならば、上記のようなリスクを受け入れる必要がある。
◇
利用者に対して定期的にソフトウェアそのものもバックアップとして
配布してくれれば、少しは良い状況になるかも知れませんね。
ハードウェアはだいぶコモディティ化しているので、これは外部で
調達してもよさそうですし。
同じ文脈で考えると、PaaSなんてのも良くないですね。
PaaSベンダーが提供する特殊な開発環境開発言語でしか動かないソフトを
作ってしまったら、完全に囲い込まれてしまいます。
PaaSベンダーで、開発環境がLAMPですよとかJavaですよとかって話は
聞かないですもんね。
(いや、そもそもPaaSなんて言ってるベンダーが限られてるか…)